サルタックの教育ブログ

特定非営利活動法人サルタック公式ブログ。教育分野の第一線で活躍するサルタックの理事陣らが最先端の教育研究と最新の教育課題をご紹介。

市民社会とは何か?NGOと市民社会は同じなのか?

NGOで活動している団体や人たち(私も含めて)は、よく「市民社会」という言葉を使います。一方でこの市民社会とは何か考えられないまま、NGOを指すような言葉として使用されています。

現在、市民社会スペースが狭まっているなどと危惧されていますが、そもそも市民社会とは何なのか、なぜNGOをわざわざ市民社会と言い換える必要があるのかを問うことで、今後の市民社会やNGOの役割を考えるきっかけにしたいと思っています。

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・市民社会とは?

市民社会という言葉は使い手や指す時代によってその意味が変わってくるようです。元々市民社会は、アリストテレスの国家共同体(国家)を英訳した言葉でした。17-18世紀には「国家」という要素が色あせて、経済的自由を持った個人により形成される分業に基づく商業社会(資本主義社会)として使用されるようになりました。

また日本の戦後の識者は、市民社会が資本主義社会という社会状態を指す言葉から分離し、「自由・平等・博愛・正義」に関わる規範的理念を指す概念に転化したと述べています。つまり、どれだけ自由で平等な社会が実現されているかを測る物差しのような概念に変わったということです。

ここでは市民社会の概念の詳しい変遷については述べませんが、下記の本が詳しいです。

www.amazon.co.jp政治学のバックグラウンドがないので、少し難解な部分がありましたが、大意は理解することができました。

現在NGOを指すときに使われる市民社会という言葉は1990年代以降に現れた新しい市民社会論の文脈で意識的にも無意識にも使われているように感じます。

 

2つ上の本の中で紹介されている市民社会の定義を紹介します。

1つがハバーマスのもの。

市民社会の核心は自由な意思に基づく非国家的・非経済的な結合関係

 

2つ目がアメリカのマイケル・ウォルツァーのもの。

強要されない人間的協同の空間と、さらにこの空間を満たすー家族、信仰、利害、イデオロギーのために形成されたー関係的なネットワーク

 

どちらも市民社会を市民団体とそのネットワークと捉えています。

具体的には教会やスポーツ・文化団体に加えて、政党や労働組合などの団体や集まりのことを指しています。またその団体は政治(国家・政府)や経済(企業・市場)とは別の領域に存在しているというのが特徴です。この定義に純粋に従うと、非政府で非営利な団体である「NGO=市民社会」ということになります。

一方で、非政府で非営利であれば、市民社会=市民団体といえるのでしょうか。

市民団体の中には、家族や地域のサッカーチームからサルタック、グリーンピースに至るまで多くのものがあります。

これに対して上の本の中で紹介されているエーレンバーグは市民社会=市民団体をその目的や役割によって区別するべきであると主張しています。現在、市民社会・経済・政治と明確に境界を作ることは難しくなってきているのは承知ですが、市民社会の特徴となるのは市民団体であるだけでなく、前述した「自由・平等・博愛・正義」のような規範的理念を持っている市民団体と言えるのではないかと思います。

私たちサルタックもQuality Learning for Allという理念を掲げて活動しています。

 

・NGOを市民社会と言い換えるのはなぜか?

こうやって市民社会の定義を見てくるとなんとなく、NGOを市民社会と言い換える理由が分かったような気になります。

NGOを日本語にすると非政府組織です。日本ではNPOという名前を使用することもありますが、これも日本語では非営利組織です。自らを「政府ではない」・「営利ではない」組織と消極的な形でしか指すことができません。これではNGOのアイデンティティを明確にすることは難しいでしょう。

ここで市民社会という言葉を使えば、上記のビジョンを持った市民団体というアイデンティティを示すことができます。

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・市民社会に求められる役割

政府・経済とは別の市民社会の視点から活動を実施していくことは重要です。阪神大震災や東日本大震災などの際には多くの市民団体が活躍し、市民社会の力が強まっていることも確かです。

一方で、市民社会の規模の拡大は、政府がサービスを縮小し、規制緩和や民営化によって市場に任せる時代背景とも重なっています(ネオリベラリズム)。

例えば、保健や教育など従来は政府の役割とされていた分野にNGOが参入し、サービスの実施を行っているケースがあります。NGOが政府が手を引いた分野に進出することを「NGOの民主化」と揶揄されることがあるそうですが、皮肉ですよね、市民社会の活動の盛り上がりの一因が政府の責任の削減・市場化の結果だというのは。

このように見てくると、市民社会が今目の前にある課題に向き合っていくことも大事ですが、国家や経済が果たしていくべき役割について主張していくこと(アドボカシ―)の必要性を感じます。

 

しかしながら昨今は政府のNGO規制が世界各国で強くなっているようで、市民社会スペースが狭まり、NGOが自由に発言することが難しくなっているようです。アフリカでもその動きは見られていて、エチオピアではNGOの反政府活動の規制強化の法律が可決されました。ここケニアでもその動きは見られます。

より強権的な国家が力を増してきていると言われる昨今、自由にNGOが発言し、政府にアドボカシ―をしていく難しさがあります。

 

ソーシャルビジネスや官民連携などがバズワードとなり、政府・経済・市民社会の境界が曖昧になってきている現代において、市民社会=NGOの意義やあり方、他セクターとの連携について考えていく必要があるでしょう。 

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