サルタックの教育ブログ

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World Book Dayに何を着る?~読書推進をめぐる日英比較

こんにちは!イギリスでは、3月7日に「World Book Day」がありました。これは読書の推進を目指すもので、UNESCOで提唱されたWorld book and author’s Copyright Day(世界図書・著作権デー)は4月23日ですが(日本も4月23日に「こども読書の日」が定められていますが)、イギリスでは諸事情(イースター休暇やその他の祝日)を踏まえて、3月第一木曜日と日程が調整されているそうです。
そこで今回は、World Book Day を中心に、イギリスにおける読書推進の取り組みについて紹介したいと思います。

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仮装をするのは何のため?~World Book Dayをめぐるエピソード

1年前の冬のある日、学校から帰っていると、子どもが「明日は、キャラクターの衣装を着てくるんだって」と言い出しました。えっ何故?と尋ねると、よく分からないけど、着てこなくても良いけど、自分は着ていきたい、とのこと。確かによく分からないけど、ハロウィンに来たディズニープリンセスのドレスとかを着ていけば良いのかなと思っていると、「そういうキャラクターじゃなくても何でもいいんだって」と言うので、何でもいいなら好きな服を着ていけば良いのでは、、となかなか話がかみ合いません。しばらくして判明したのは、明日はWorld Book Dayだから、本の登場人物の格好をしましょう、ということだったのでした。三つ編みと不揃いな長くつ下でピッピになったことにした娘でしたが、学校でも、半分くらいの子どもたちが本の登場人物を意識した格好だったようです。
それから1年後、今年は子どもたちの通う公立小学校(community school。イングランドの学校の種類については以前の記事を参照ください)では、World Book Day Breakfastと題して、いつもよりも早く登校して学校で朝ご飯を食べながらそれぞれの衣装を披露する、というイベントが企画されていました。既にWorld Book Dayの存在を認識している我が家の子どもたちも、ずっと前からハリーポッターの登場人物になろうと楽しみにしていて、当日は午前3時半に目覚めて着替えてしまうほど。幸い、もう一度眠ってくれましたが、待ちきれずにいつになく早く起きたのでした。学校では、子どもだけでなく、先生も様々な格好で本の登場人物になっていて、海賊、妖精、騎士、お姫様、トラ、ミツバチなど(何人ものハリーポッターを見かけました)。中には、どのキャラクターになっているのか分かるように、モデルとなった本や絵本を携えている人もいました。さらに、各クラスから優れた衣装の子ども数名が選ばれ、近隣の店舗で学校の図書購入費の募金を呼び掛けたそうです。
本の登場人物になる、という仮装のところが商業化され強調されているきらいはありますが、学校からも、特別な衣装を買う必要はないと、以下のような簡単にできる「なりきり例」が配布されたりしています。(参考にしたい方もいるかもしれないので、邦訳版も出ている作品について、以下の表にまとめました。)このように手軽な対応も可能で、ハロウィンに比べると(一応)”本に親しむ“という目的もあり(お菓子をもらうというよりは、親にとっては)面白いイベントでした。

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読書を推進するには

ここで改めて、UNESCOの世界図書・著者権デーの趣旨を振り返ってみると、世界図書・著作権デーは、本の持つ力、過去と未来を繋ぎ、文化を結び世代の架け橋となる秘められた力を認識し祝うために、1995年に制定された、とのことです。

そこでイギリスでも、World Book Dayには、登場人物の衣装を身に着けるだけでなく、読んだ本の内容を友達や家族と話し合うことを呼び掛けたり、児童1人ひとりに図書購入の£1(≒145円程度)クーポン券が配られたりしています。また、それぞれの学校では、World Book Dayに合わせてテーマ学習をしたり、チャリティー団体への寄付を募ったり、地元の図書館に校外学習に行ったりと、本の登場人物のコスチュームを着るだけでなく、読書の推進を目的としたいろいろなイベントが全国各地で企画されています。
この他、日々の生活ではどのように読書は推進されているのでしょうか。子どもたちが通う公立小学校では、(ほぼ)唯一の宿題は、本を読むことです。特に、段階別読書スキームに従って、自分の段階に応じた(絵)本を持って帰り、ノートに記録を付けることになっています。また、このノートを先生が定期的にチェックして、ある程度の冊数に達すると、リストバンドがもらえるという読書バンドシステムを導入しています。その名も「Reading Karate」というこの仕組みでは、日本の空手の昇級制度をモデルにしていて、段階を上がると、バンドの色が白から黒へと変わっていきます。
外発的動機付けがないと本を読まなくなってしまうということにならないか、そもそも外発的動機がないと宿題をしてこないのか?と少し気になるところですが。。

一方で、日本ではどのように読書が推進されているでしょうか。すぐに思いつくのは、夏休みの宿題としての読書感想文や、図書委員などの委員会活動を通した取り組みです。World Book Dayとの比較で言えば、日本では、UNESCOと同じ4月23日が「子ども読書の日」とされていて、子供の読書活動優秀実践校等への表彰式が行われています。また日程的には、新学年が始まって間もないことから学校では図書室利用のオリエンテーションを企画したり、ゴールデンウィークと合わせて地域の図書館では各種イベントが企画されているようです。読み聞かせ、人形劇、映画の上映、しおりのプレゼント、おすすめ本の紹介文の作成展示、こども一日図書館員/司書体験等、様々です。


これらの取り組みをみていると、実際に、どれくらい読書の習慣がついているのかが少し気になります。そこで、やや古いデータですが、OECDによるPISAのアンケートをのぞいてみたいと思います。

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 出典:『PISA 2009 Results: Learning to Learn (Volume III)』より筆者抜粋・編集

上のグラフのように単純に割合だけを見ると、趣味としては本を読まないと答えた子ども(調査対象は15歳)がイギリスでは約40%と、OECD平均37%を上回る結果となっていました。一方で日本を見てみると、楽しみとして本を読まないと答えた日本の子どもは44.2%に上っていた一方で、一日30分以上本を読むと答えた子どもの割合はOECD平均と遜色ありません。ここから、イギリスでは他のOECD諸国に比べて子どもに読書を習慣化させることができていないのに対して、日本は部分的ながら子どもを読書好きにすることができているということもできるかもしれませんし、日本で垣間見られるような読書をする子ども・しない子どもの二極化に対して、ギリスでは少しでも読書をする状況を作り出せている、ということもできるかもしれません。このようにデータから判断するには、家庭の経済状況、社会的文化的資本、ジェンダー、他の年齢層との比較等、その他諸々の要素を勘案することが必要になるので、詳しくは他のメンバーに任せたいと思います。ここでは、その成果を簡単に評価することは難しいものの、科学的リテラシーを含めた学力習得においてプラスの影響を与えていると指摘されている読書を、促す取り組みが様々に工夫されている、という状況を具体的にみてきました。

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サルタックと読書推進の取り組み

サルタックでも、ネパールの教育の質向上に向けた活動の大きな柱となっているのが、読書の支援・推進です。
ネパールの小学校で週に一回、本の読み聞かせや子どもたちの読み書き能力の育成支援などを行うサルタック読書クラスを実施しています。また、サルタック読書タイムとして、子どもたちに読書習慣を定着させるべく連携する学校に本を配布したり、イベントとして読書キャンプを実施し、子どもだけでなく親にも本に親しんでもらい読書への理解を高める取り組みを行なったりしています。(現在の活動の様子は、サルタックのFacebookに随時アップされていますので、是非チェックしてみてください!)
その他の読書推進の取り組み案として、イギリスのWorld Book Dayのように物語の登場人物のコスチュームを着て学校に行く、という方法はネパールでは現実的ではないかもしれませんが、自分のお勧めの一冊についての紹介文を書いて書店や学校に掲示してもらう、というのは取り入れやすそうです。
このように読書の推進の方法には様々な在り方がありますが、目的と利用可能なリソース等を踏まえたうえで、各国の取り組みを参考に展開できればいいなと思います。これからも、子どもたちに質の高い教育を届けるべく、活動を展開していきたいと思いますので、引き続きご支援をよろしくお願いします!


(荒木真衣)

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