サルタックの教育ブログ

特定非営利活動法人サルタック公式ブログ。教育分野の第一線で活躍するサルタックの理事陣らが最先端の教育研究と最新の教育課題をご紹介。(noteへブログを移行しました。新しい記事はnoteにアップされます→https://note.mu/sarthakshiksha)

荒木啓史

サルタック代表理事、社会情報大学院大学准教授。社会学博士(オックスフォード大学)。1984年生まれ(埼玉県出身)。東京大学大学院教育学研究科修了後、2008年より2016年9月まで三菱総合研究所に勤務し、教育分野を中心として多数の調査研究・コンサルティングに従事。2015年には約半年間、タイにある東南アジア教育大臣機構・高等教育開発センター(SEAMEO-RIHED)にリサーチフェローとして滞在し、東アジアにおける高等教育の高度化・調和化に向けた実務支援・調査研究に関与。現在、埼玉親善大使(Saitama Goodwill Ambassador)、三菱総合研究所客員研究員も務める。 得意分野 教育社会学、教育政策・制度分析、学力調査・分析、政策評価、社会調査

教育を通じた「格差・貧困の固定的再生産」は実際にどの程度起こっているのか:RetrospectiveからProspectiveなアプローチへ

子供の成績・学歴やその後の職業・収入は、家庭の社会経済的背景(Socio-economic Status:SES)によって強く規定されている。このような見方は、昨今、多くの人に共有されているのではないかと思います。実際、文科省が実施している全国学力・学習状況調査…

なぜ「人的資本論かシグナリング理論か」論争は不毛なのか?教育の経済的リターンを社会学的に考える

オックスフォードからこんにちは!先週、理事の畠山が「学校なんか行っても意味がない!」という記事で、人的資本論とシグナリング理論(特に後者)について解説しましたが、今回はこれらの経済学理論が現実社会を捉える上でなぜ不十分なのか、という点を社…

サルタック・ブログの一年を振り返る:障害児教育の教育経済学からヒマラヤ、オックスフォード、そしてキリマンジャロの麓まで

新年明けましておめでとうございます!現在のサルタック・ブログ(はてなブログ)を2017年12月17日に始めてから、早くも1年が過ぎました。最初の記事は理事・畠山の「幼児教育から考えるーアメリカの研究結果は日本にとって妥当なのか?」、最新の記事はイン…

オックスフォード大学入学者データとOECDデータに見る「教育と公正・格差」

オックスフォード大学が社会の格差を生み出している!半年ほど前、こんなニュースがイギリスを騒がせました。オックスフォード大学が、これまで謎に包まれていた入学者(学部生)の属性(家庭環境やエスニシティ)に関する年次統計レポートを初めて公表した…

OECD教育データが物語る「日本型教育」の特徴

昨今、「日本型教育の海外展開・輸出」という言葉をよく耳にするようになってきました。これは、文部科学省が旗振り役となって主導している取組で、その名のとおり優れた日本の教育を一つの産業として海外へ展開し、各地の教育改善に貢献しつつ日本の経済発…

遺伝か環境か?ゲノム科学と社会科学の融合(Sociogenomics)が教育界にもたらすイノベーション

人の能力を決めるのは、遺伝か環境か。より正確には、人の能力はどの程度が遺伝によって、どの程度が環境によって説明可能なのか。これは、古くから議論されてきたテーマですが、昨今の遺伝学、ゲノム科学の進展により、新たな知見が続々と明らかにされてき…

The Secret to High Academic Performance in Science: Evidence from the National Assessment of Academic Ability in Japan – (3) Qualitative Analysis

不利な環境でも子供の学力を高める秘策:全国学力・学習状況調査の分析結果から(3) On 2 July, I couldn’t believe what I was watching when Belgium scored a goal in injury time, leading to Japan’s heartbreaking loss in the 2018 FIFA World Cup (de…

The Secret to High Academic Performance in Science: Evidence from the National Assessment of Academic Ability in Japan – (2) Quantitative Analysis

サッカー日本代表、やりましたね!強豪国コロンビア相手に2-1での勝利、興奮しました。2018年6月7日付のFIFAランキングを見ると、コロンビアは16位、日本は61位ですから、大金星と言っても過言ではないでしょう。ところで、様々ある世界ランキングの中で、…

The Secret to High Academic Performance in Science: Evidence from the National Assessment of Academic Ability in Japan – (1) Introduction

不利な環境でも子供の学力を高める秘策:全国学力・学習状況調査の分析結果から(1) Last week, I was privileged to give a talk to a mission from China at the Green Templeton College, University of Oxford, about my research on Japanese student…

これからの「エビデンスに基づく教育」の話をしよう(4):Theory of Changeの活用

Greetings from Oxford!昨年12月から3回に渡って、「これからの「エビデンスに基づく教育」の話をしよう」と題して、記事をお届けしてきました。

これからの「エビデンスに基づく教育」の話をしよう(3):複合的なエビデンスの重要性

エビデンス(科学的根拠)に基づく教育を!このスローガンを出発点に、前々回の記事では「エビデンスに基づく教育」という考え方が日本においても市民権を得始めてきていること、他方で「そもそもエビデンスとは何か」という点について十分な共通理解が醸成…

これからの「エビデンスに基づく教育」の話をしよう(2):RCTはどこまで「理想的」か

オックスフォードからこんにちは! 前回の記事では、「エビデンスに基づく教育」に関して、エビデンスの階層性・レベル(LOE)という概念を紹介しつつ、精緻な因果推論を行う上でランダム化比較試験(RCT)が一つの有用なアプローチであることを確認しました…

これからの「エビデンスに基づく教育」の話をしよう(1):「エビデンス」のレベル

エビデンス(科学的根拠)に基づく教育を!昨今、こうしたフレーズを日本においてもよく耳にするようになってきました。記憶を辿ると、2000年頃に東京大学教授の苅谷剛彦氏(現・オックスフォード大学教授)らが教育分野における「エビデンス」の重要性を説…